認知症になりにくいまち=歩行・社会参加がカギ

毎日新聞の記事を紹介します。
何が地域での認知症率を分けるのかということですが・・・
人間を人間たらしめているのは「歩く」ことだというところでしょうか。

私の社会保障論 認知症になりにくいまち=歩行・社会参加がカギ
千葉大予防医学センター教授・近藤克則
毎日新聞2017年9月13日 東京朝刊
https://mainichi.jp/articles/20170913/ddm/016/070/023000c


 他のまちに比べ、3倍も認知症になりやすいまちがあると言ったら信じてもらえるだろうか。しかも高齢化が進んでいる地域だから多いのではない。前期高齢者(65~74歳)に限定して比較しても、3倍の差が残るからだ。

 これは10万人超の高齢者にご協力いただいた日本老年学的評価研究(JAGES)の調査で見えてきた事実である。最初は何かの間違いかとも思った。しかし、多くの健康指標において、2010、13、16年の3度の調査で繰り返し見られるのだ。このような地域間や集団間の健康状態の差を健康格差と呼ぶ。

 同じ日本国内なのに、なぜ、これほどの健康格差がみられるのだろう。その理由を解き明かすことができ、それを積極的に活用できれば、そこに暮らしているだけで、さほど意識をせずに認知症になりにくいまちや社会をつくれるかもしれない。前回の本欄でも紹介した「ゼロ次予防」に向けた研究を進めている。

 認知症予防の手がかりが見えてきている。歩行などの身体活動量が多い人ほど認知症になりにくい。さらに、速足で歩いたり障害物を避けたりしながら計算するなど、頭を使う活動を加えた複数課題を同時にこなすと、より有効だとわかってきた。

 調べてみると、認知症リスクを持つ人の割合は大都市部で低い。移動を車に頼りがちな地域では、家-駐車場-目的地の間しか歩かない。それに比べ、公共交通機関を使う都市部の人の歩行時間は長い。家から駅やバス停までと、降りた駅から目的地まで数分ずつは歩く。しかも、しばしば乗り換えが必要になる。

 東京のような大きな駅で乗り換えとなると10分くらいは歩かされる。さらに「○○線より△△線の□駅乗り換えの方が早いかな」などと頭で計算しつつ、人とぶつからないよう避けながら、電車に間に合うように速足で歩く。これは計算+障害物回避+速足歩行だから、みごとな認知症予防のための複数課題の同時処理になっている。

 しかし、家に閉じこもっているのではこれらの恩恵は受けられない。出かける目的が必要で、回数も多い方が良い。調べてみると、趣味やスポーツをはじめいろいろな地域組織に参加している人が多いまちでは、認知症、転倒、うつのリスクも、さらには要介護認定率まで低いことがわかってきた。つまり、社会参加やそれを通じた人との交流・身体活動量が多いまちが健康なまちなのだ。

 歩行・運動を促す交通政策や都市計画から、社会参加を促すコミュニティー政策やボランティア政策、文化・スポーツ政策などまでが健康なまちづくり政策になる。世界保健機関は「すべての政策に健康の視点を」と宣言を出している。